【洋楽アルバム】Thom Yorke 「The Eraser」レビュー
さて今回は、Thom Yorke(トム・ヨーク)の「The Eraser」をレビューします。
Thom Yorke(トム・ヨーク)は言わずと知れたRadiohead(レディオヘッド)のボーカルを務めるアーティスト。
儚く美しい声と、陰鬱ながらも心に響くメロディが持ち味のアーティストです。
Thom Yorke(トム・ヨーク) 「The Eraser」レビュー
Thom Yorke(トム・ヨーク)の 「The Eraser」は2006年発売の1stアルバムです。
この人の場合、Radiohead(レディオヘッド)での功績がすごすぎるので1stとかいうくくりにあまり意味はありません。
ソロ名義で出すアルバムとしては1枚目というだけ、実際には完全に大御所アーティストです。
では全曲レビューします。
1.The Eraser
ディレイのかかったピアノのリフからアルバムはスタート。
いきなりお得意の変拍子。それでも違和感なく心地よいメロディでスッと入ってきます。
サビ部分の泣けるメロディと、張りめぐらされたコーラスワークはさすが。
非常に気持ちよく浸れるエレクトロナンバー。
このアルバムは拍にとらわれずに自由に歌うボーカルが印象的ですが、それを象徴するかのような1曲目。
2.Analyse
珍しくいきなりボーカルから始まるダーク目なエレクトロナンバー。
全体的に淡々とした調子で、ボーカルも少し気だるい感じ。
ピアノのリフと、ドラムのリズムパターンが延々同様のものが続く、ミニマルな曲ですね。
個人的にはトム・ヨークにしてはややパンチに欠けるなと思う曲です。
3.The Clock
トム・ヨークの伸びやかなボーカルが気持ち良い1曲。
メロディはいかにもトム・ヨーク節。
とくにロングトーンのビブラートなんかはかなりゾクっときますね。
メインのリフはギターなのかシンセなのかよくわからない、非常に不思議な曲です。ボイスパーカッションはトム・ヨーク自身の声ですかね。
4.Black Swan
うねるベースラインとクリーントーンギターのアルペジオでゆったりしつつもタイトなナンバー。
これはRadiohead (レディオヘッド)でもやりそうな展開ですね。
トム・ヨークのボーカルは低音で淡々と歌う感じ。それがトラックのタイトさと非常によく合います。
控えめなコーラスもいい感じ。
5.Skip Divided
トム・ヨークの声のサンプリングを演奏がわりに使った変わり種ナンバー。
メインボーカルはラップ調というか、語りですね。
メロディはほぼありませんが、目の前にトム・ヨークがいるかのように畳みかけてくるボーカルです。
感情もないように見せかけて、要所要所で詰め込んできます。
6.Atoms For Peace
エレクトロ・ポップナンバー。
心地よい単音シンセのリフが浮遊感を感じさせます。
トラックは同じ演奏が繰り返されますが、その上に乗るトム・ヨークのボーカルは非常に自由に踊りまわるイメージです。
とくにサビ部分のファルセットを交えたメロディはトム・ヨークならでは。
陰鬱な曲が多い中、これはかなりポップで聴きやすい1曲。おすすめ。
7.And It Rained All Night
不穏なノイズから始まるダークなエレクトロ・ナンバー。
ストリングスっぽいシンセのおとが不安感を煽ります。土台を支えるベースのフレーズがポイント。
トム・ヨークのボーカルは、ここでもややラップ調。サビはメロディアスになりますが、不安感はそのまま。
間奏は完全なるカオスでトバされること間違いなしです。
8.Harrowdown Hill
ポップめなベースのリフから始まるものの、そこにお得意の不穏なシンセがかぶさり、ダークなエレクトロワールドへ。
ややもすると冷たくなりがちなエレクトロ・トラックですが、ボーカルはかなりメロディアスでエモーションを感じられます。
もし演奏がロックなら、結構イケイケの曲になっているかも。
9.Cymbal Rush
ピコピコエレクトロナンバー。
浮遊感を感じつつ、後ろで鳴るピアノのフレーズはやはり陰鬱。
しかしながら、トム・ヨークのボーカルはなぜか明るさを感じさせます。
もちろん「美しいメロディだから」というのはありますが、それだけではないなんとも言えない希望が見えるというか。
また、全ての音があるべきところにあるため、聴いていて非常に没頭できます。
イントロから終わりまで、余すところなくじっくり聴きたい1曲。
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レビュー総括と感想
深い深いエレクトロニカと、陰鬱ポップを掛け合わせたアルバム。
聴いた瞬間にトム・ヨークの世界に引きずりこまれる感覚はさすがですね。
全体的に拍を無視した、というか、トラックは流れつつもそこにとらわれない自由なボーカルが印象的です。
もちろんリズムもこだわって作られているのですが、その上に乗るだけではなく、はみ出してでも表現する感じが伝わってきます。
声はトム・ヨークとしか言いようがないので、Radiohead (レディオヘッド)との違いを出すのが難しいのでは?と思いましたが、そこはバンドサウンドをあまり使わないことで差別化している感じですね。
時に冷たく時に暖かい電子音と、トム・ヨークのメロディの絡みは極上。
Thom Yorke(トム・ヨーク)の「The Eraser」おすすめです。