【邦楽アルバム】椎名林檎 「勝訴ストリップ」レビュー
さて今回は、椎名林檎の「勝訴ストリップ」をレビューします。
椎名林檎は日本のシンガーソングライター。女性のシンガーソングライターとしては日本でもトップクラスの知名度でしょう。
出てきた当初は派手なパフォーマンスや舌を巻いた歌い方など、若干イロモノっぽい感じもしましたが、確かなソングライティングでずっと人気を保ち続けているアーティストです。
椎名林檎 「勝訴ストリップ」レビュー
椎名林檎の「勝訴ストリップ」は2000年発売の2ndアルバムです。
シングル曲も多く収録されており、豪華なアルバムですね。昭和の空気あり、エレクトロ音あり、グランジありのごった煮的なアルバムですが、どれも椎名林檎の個性に溢れている1枚です。
では全曲レビューします。
1.虚言症
ベースのスラップ音から始まるロックナンバー。ゴリゴリに歪んだギターなど、演奏はヘヴィですが、ボーカルは終始メロディアス。
ところどころで舌を巻いてみたり、裏返り気味な声でシャウトしてみたり、しょっぱなから椎名林檎ワールドに引き込まれます。
2.浴室
四つ打ちのエレクトロナンバー。
ベースのフレーズがビリビリきますね。それに加わるアンビエントっぽいノイズのギターも注目。
サビ部分はシンセが入り、ややドリーミーな展開へ。メロディもキレイ。
1stアルバムにはないタイプの曲で、椎名林檎の新しい一面が見られる1曲。
3.弁解ドビュッシー
ブリブリのベースのリフから始まり、全編ベースのフレーズが印象的なナンバー。
特にサビ部分ではハンマリングからの16分音符のフレーズがインパクト大事。ボーカルはだるそうに吐き捨てるような歌い方で、歪んだような篭ったような音がロック感を醸し出します。
「あんたは仕様が無いと云うし 現実にあたしも判らぬ」等の歌詞がいかにも椎名林檎ですね。
4.ギブス
ヒットシングル。このPVが浮かぶ人も多いのではないでしょうか。
「だってカートみたいだから あたしがコートニーじゃない」などの歌詞からもわかるように、これはグランジですね。
メロディは非常に秀逸な泣きメロですね。特に「ぎゅっとしていてね」の部分のマイナーコードに変わる部分はかなりグッときます。これはヒットも納得の名曲。
5.闇に降る雨
闇属性のポップソング?といったところでしょうか。
エレクトロ調のトラックから始まり、ボーカルが入るタイミングではストリングスメインの演奏に。
特筆すべきは歌メロですね。いろいろ複雑なコードを使いつつも、ポップさを失っていないところが凄い。
サビの叫ぶように畳みかけるボーカルは圧巻。
これは初めて聴いたときはかなりの衝撃でした。
6.アイデンティティ
スピード感のあるドラムから始まるヘヴィロックナンバー。
ベースもギターもゴリゴリに歪んだ音でグイグイ攻めてきます。
曲の展開自体は非常にシンプル。Aメロ→Bメロ→サビ。というオーソドックスな曲ですが、ありあまるエネルギーが隠れることなく爆発しています。
スカッとしたいときにオススメ。
7.罪と罰
こちらもヒットシングル。
昭和の匂いがするジャズ・ロックナンバー。
冒頭の「ほぉ〜〜をさぁっすぅー」のかすれたようなファルセット混じりの声から一気にヤラレてしまいます。
これは歌う本人も気持ちいいでしょうね。
転調した後の畳みかけるようなサビの連発はもはや圧巻。
感情込めまくりのエモい歌い方がカッコよすぎです。
8.ストイシズム
箸休め的な1曲。
「罪と罰」の歌詞を逆に読んだ歌詞。
訳のわからない曲ですが、ポップさは健在で非常に聴きやすいです。
9.月に負け犬
正統派ギターロック。
サビの「明日 くたばるかもしれない だから今すぐ振り絞る」はいかにも椎名林檎な歌詞でありながら、ストレートに響いてきますね。
懇願するように叫ぶ椎名林檎の声が心を打ちます。
最後のサビ前の「吐く息が〜」の囁くような歌い方から、声が枯れるほどの最後のサビの流れは圧巻。
10.サカナ
ダークなロックナンバー。
これは評価の分かれる曲でしょうね。
キーボードにギター、ベースにサックス。いろんな音が混在し、ジャンルもごちゃ混ぜな1曲。
ポップさはほぼありません。それぞれの演奏は非常にカッコいいですが、曲として好きかと言われると個人的にはあまり好きではありません。
11.病床パブリック
歪んだドラムに歪んだギターのイントロ。椎名林檎のボーカルも歪んだ低音メロディ。マニアックな曲かと思いきや、サビはいきなりポップなメロディに。
最後まで聴いてみると、良質なギターロックであることがわかります。
歌詞はもう椎名林檎ワールド全開ですね。
12.本能
舌巻きボーカルが印象的なロックナンバー。
シングル曲らしく、シンプルで非常に聴きやすい展開と言えると思います。
コード進行は意外と(?)オシャレ系ですね。
メロディも秀逸で、最後は転調して叫ぶようなボーカルが魅力的です。
「もっと中迄入って」など、他の人は書けない歌詞も聴きどころ。
13.依存症
ラストは切なめのグランジ調ラブソング。
サビのメロディと歌詞が泣けますね。この曲の歌詞はかなり好きなフレーズが多いのですが、「孤独を知る毎に あなたの相鎚だけ望んでいるあたしはあたしは」の部分が特にグッときます。
やり場のない悲しみをぶつけるかのように、ラストは轟音の海。
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レビュー総括と感想
冒頭にも書きましたが、シングル曲を織り交ぜた豪華な1枚。
シングル曲は言うまでもなく素晴らしい楽曲達なのですが、アルバム曲もまた素晴らしい。
特に「闇に降る雨」は非常に才能を感じる曲です。このメロディとトラックは聴いたことないし、今後他のアーティストから聴けるとも思えません。
前の曲「ギブス」の泣きメログランジからの闇バラードという流れも非常にいいですね。
あとは歌詞も聴きどころですね。
「月に負け犬」や「依存症」の歌詞はストレートに心を突き刺してきますね。
全体的に非常に濃く、楽しめるアルバムです。
椎名林檎の「勝訴ストリップ」おすすめです。