【邦楽アルバム】原田郁子 「ケモノと魔法」レビュー
さて今回は、原田郁子の「ケモノと魔法」をレビューします。
原田郁子は日本のスリーピースバンド、「Clammbon(クラムボン)」のボーカルとピアノを担当するアーティスト。
特徴的な暖かみのある声と、優しいメロディでなんとも言えない包み込まれるような空気を持っています。テレビCMの歌を歌ったりもしているので、「聴いたことある声」と思う人も多いのではないでしょうか。
原田郁子 「ケモノと魔法」レビュー
原田郁子の「ケモノと魔法」は2008年発売の2ndアルバムです。
1stアルバムの「ピアノ」とはかなり印象が違う、ポストロックやアンビエント的なサウンドを取り入れたアルバムです。
では全曲レビューします。
1.青い闇をまっさかさまにおちてゆく流れ星を知っている
いきなり9分超の大作。
冒頭はクラシックギターの悲しげな響きと原田郁子の飾らない声のみの弾き語り。
サビ部分は今にも消えてしまいそうなほどか細いボーカルと「不思議なくらい いま 自由だよ」という歌詞が胸を打ちます。
その後はウッドベースが入り、フリージャズに。これがまたカッコいい。
こんなすごい曲は聴いたことがありません。
2.こだま
クラムボンでも演奏している曲のソロバージョンですね。
キーもちょっと低めに変更しており、アコースティックギターのアルペジオがメインのゆったりした曲調。
フルートを全編で打ち出しており、混沌とした空気を醸し出しています。
3.ピアノ
ピアノの弾き語りナンバー。
非常にもの悲しいメロディに、少し遠くから聴こえるピアノの音がさらに切ない。
原田郁子の囁くような優しい声とマッチします。
歌詞の意味はわかりませんが、この深く美しいメロディと合わさって、沁み渡ってきます。
4.サヨナラ オハヨウ
イントロのアカペラ部分から一気に原田郁子ワールドへ。
バックで鳴る、ベルのようなキーボードの音が心地よい。
もちろん歌メロも癒し系。教会で聴きたくなる、心を洗ってくれるメロディとトラック。
全てカタカナの4文字の単語からなる歌詞も面白い。これは他のボーカリストには歌いこなせませんね。
5.あいのこども
ハナレグミの曲ですね。
オリジナル版とはかなり印象が変わりますね。暖かいメロディはそのままに、ピアノとSE的なサウンドを特化させることで、原田郁子の声を活かしていますね。
サビの歌い方もオリジナルとは変わっており、もはや別曲といってもいいほど。全体的に暗めなアレンジですが、ラストは様々な音が入り混じり、希望を感じさせる音に。
6.感嘆符と溜め息(instrumental)
ピアノのインストナンバー。
軽快なリズムにおもちゃ箱のようなメロディ。これまでのゆったりフワフワした展開とは一線を画す1曲です。
7.クイカイマニマニ
ブラスバンドで演奏する民謡?です。
みんなで一斉に歌う元気いっぱいの1曲です。
8.やわらかくてきもちいい風(弾き語り)
正統派ピアノバラード。ザ・原田郁子と言える1曲。
このアルバムは弾き語りでも、他に打ち込みの音が入っていたり、アンビエント的な側面が感じられますが、この曲はシンプルにピアノと歌のみ。
だからこそ感じられる極上メロディと歌詞。
原田郁子と永積タカシのタッグでしか出し得ない味。
9.ケモノと魔法
クラシックギターの泣けるアルペジオから始まるタイトル曲。
これは極上というほかありません。文句なしのリードトラックでしょう。
「ずっときみをみつめたい」の部分は歌詞もメロディも最高。
この曲も余計な音は一切なく、クラシックギターと歌、最低限のシンセのみ。男性ボーカルとの絡み、コーラスも素晴らしい。
この心が温まる感じは、原田郁子ならではですね。
10.ユニコーン
ピアノとスライドギターの音が切なすぎるバラード。このあたりは怒涛の泣きメロ曲連発ですね。
リズム隊は入らず、ひたすらに歌のメロディと向き合える1曲です。
「君から生まれて 孤独を知ったよ」などの刺さる歌詞や、左右から聴こえるピアノとギターのアルペジオの絡み合いも聴きどころ。
11.もうすぐ夜があける
ラストはシンプルなピアノ弾き語りナンバー。個人的にはこのアルバムのベストトラックです。
歌詞といい、メロディといい、オーガニック系の極みといったところでしょう。しっとりと優しく毛布に包まれたような暖かい1曲。
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レビュー総括と感想
1stアルバムの根本部分は継承しつつ、かなりシリアスな曲が多いアルバムです。
しょっぱなの「青い闇をまっさかさまにおちてゆく流れ星を知っている」はシンプルバラードと見せかけて、途中でフリージャズに突入する9分超の大作で、いきなり出鼻をくじかれます。
さらに「こだま」もクラムボンのオリジナルとは打って変わって、非常にカオスを感じさせる展開。
その後はメロディを非常に大事にした美しい曲が続きますが、やはりどこか影を感じる楽曲ばかりです。
しかしながら、持ち味である優しく特徴的な声は活かされていて、なんとも言えない心地よさです。
原田郁子の「ケモノと魔法」おすすめです。